7.もう一つの拉致

薄氷の張る寒い朝が四日続いていた。疎水の水際に最初の氷が張ったのは、進太が清美の待ち伏せを嫌ってドーム館を訪ねた翌朝だった。あの晩の帰り道で進太は、安易に清美を避けたことの報いを十分に受けた。ヘッドライトを装備していないレース用のモトクロス・バイクで下りる山道の恐怖は、もう二度と味わいたくはない。二段もギヤを落として情けないほど低速で坂を下るバイクの尻を、ゲレンデヴァーゲンのヘッドライトが煽りまくった。まるで狩り立てられているような気がする。真っ暗な山道を照らすために送ってくれるチハルの好意はありがたいが、追われる者の悲哀と焦りが脳裏を掠めた。お陰で進太は、二十分も続いたのろのろ運転にも関わらず、無様な格好で三回も転倒してしまったのだ。低速のため身体に怪我は無かったが、全身を覆った恥辱が胸に痛かった。結局次の晩に、進太は清美の説得に屈した。来週の後半には十二月を迎えるが、進太の気持ちは沈みきっている。月曜日の午後から三人のクラスメートに勉強を教えなければならなかった。

「クソッ、むかつく」
憎々しい声で言って、足元の小石を疎水に蹴り入れた。朝日に輝く水面が揺れ、波を被った薄氷が虹色に光って溶けた。三人の女の子に勉強を教えるのは面倒だが、決して苦痛ではない。確かに級友には受け入れられるだろう。それどころか、秀でた学力が敬われ、指導力が頼られ、人格が好かれ、容貌が愛されるだろうと思う。だが、それが何になるのかと進太は思う。級友たちに溶け込むことができない限り、これまでと変わるところはどこにもない。学校での位置も関係も変わらず、進太の色合いだけが変わる。それは衣装を替えるに等しい。望みもしない衣装に着替えて人前に立つのは、まるでピエロのようだ。それも強いられたピエロだった。耐え難い仕打ちだ。その仕打ちを受け入れてしまった自分が歯がゆくてならない。テストの答案のように消しゴムで消してしまいたくなる。せっかく書いた正解の答案を一生懸命消し、白紙で提出した保健体育のテストを思い出した。くーちゃんの顔が目に浮かんだ。大きな目元がキヨミ先生に似ていた。

「そうか、キヨミ先生を消せばいいんだ」
つぶやいてみると、全身の怒りが嘘のように去っていく。進太の口元に笑いが浮かんだ。背後から貧相なエンジン音が聞こえ、軽トラックが進太の横に並んだ。黒いサングラスをかけたMが運転席の窓から顔を突き出す。
「今夜は悪いけど、祐子と夕食を食べてアトリエに泊まるわ。帰りは土曜日の午後になると思うけど、いいわね」
早口でMが言った。黒いサングラスが朝日を反射してまぶしく光る。表情からは分からなかったが、進太は嘘の臭いを嗅いだ。チハルも今夜、祐子と一緒に市に泊まると言ったのだ。チハルに聞いたのは昨日の午後のことだ。山地で頻繁に警官の姿を見掛けるようになったので、歓楽街で憂さ晴らしをしてくると言っていた。だが、祐子は一人しかいない。Mとチハルが、祐子を囲んで三人で夜を過ごすとは思えない。どちらかが嘘をついているに違いなかった。

「いいよ、ゆっくりしてくれば。どうせ酒を飲むんだから、泊まってきた方がいいよ。最近の山地はパトカーが多い」
素知らぬ顔で進太が答えた。
「ありがとう。食料は冷蔵庫に満杯だから、好きなものを食べてね」
Mが言い残して軽トラックを発進させた。華やいだ声の余韻が進太の耳に残った。嘘を言ったのはMだと確信する。妙に艶めいた匂いが鼻を掠めた。精液の匂いに似ている。突然、Mの裸身が脳裏に浮かんだ。後ろ手に緊縛された裸身だ。よく見ようとすると顔が清美に変わった。恥じらいを浮かべた美しい表情だった。急激にペニスが硬くなってくる。素っ裸にした清美を監禁する妄想が進太の全身を支配した。後は消しゴムを用意するだけだ。何とかなるような予感がする。無性に清美に会いたくなった。進太は白いトレーナーにジーンズ姿で学校に向かった。とても登校する格好には見えない。バイクで行きたかったが、街道を行き来するパトカーを思い浮かべて断念した。警官たちが山地で消えた博子と白いパジェロを捜索していることを、進太はまだ知らない。


清美は教卓の椅子に座って窓の外を見ていた。二時限目の休み時間は始まったばかりだ。清美が担任する小学校五年生たちが校庭に飛び出してきた。風が立つ度に舞い落ちる銀杏の葉を宙で掴もうとして追い回す。遠く近く嬌声が響き渡る。毎年繰り返される秋の終わりの行事だ。のどかな光景だった。その子供たちに警察が事情聴取をしたのは、つい三日前のことだ。学校に警官が来るのは昨年の久美子の殺人事件以来、当たり前のようになっていた。落ち着いた静けさを誇っていた山地で、心が痛む事実だった。行方不明の女性と外国人の青年のことは、サッカー部に所属している二人の子供がよく覚えていた。だが、三週間以上も前のことだ。万一事件だとしたら、二人とも生きていないことは清美にも予想できた。殺伐とした雰囲気が美しい自然を浸食しているようで気が重くなる。せっかく説得することができた進太のことも気掛かりだった。同級生の補習は引き受けたものの、相変わらず不登校が続いているのだ。

「少し強引だったかな」
窓の外の校庭に向かってつぶやいてみると、人気のない教室の寒さが改めて肌に染みた。今朝聞いたカーラジオで、西高東低の冬型の気圧配置が緩み、週末にかけて温かい日が続くと予報していたことを思い出して苦笑してしまった。このまま真冬になってしまいそうだ。大げさに身震いすると外の景色が揺れた。金色に輝く銀杏の下を歩いてくる進太も揺れて見えた。予期せぬ姿を目にして、うれしさが込み上げてきたが、進太の格好はどう見ても登校するスタイルではない。それでも立ち上がって、校庭に面したガラス戸を開けた。途端に日射しの温かさが全身を覆った。天気予報が当たったようだ。何となく心が浮き立ってきて、上履きのまま外に出て進太を迎えた。

「進太ちゃんは相変わらずアウトドア志向みたいね。山の中で白いパジェロを見掛けなかったかしら。三週間前から、若い女性と外国人が行方不明になっているの。三日前に、学校にも警官が捜索に来たのよ」
気軽な声で進太に呼び掛けた。一週間も登校しなかった進太に、さり気なく最新の情報を与えて気を引くつもりだった。会う早々補習の約束を持ち出すのは得策ではない。
「白いパジェロですか。見ませんね」
つまらなそうな口振りで答えてから、進太はうつむいて考える素振りを見せた。確かに進太は白いパジェロを見ていない。しかし、博子が乗っていた車に違いないと思った。パトカーが回ってくる理由も知れた。白いパジェロと外国人を始末した後、チハルは築三百年の屋敷に博子を拉致してきたのだ。薄暗い土蔵の中で素っ裸で立ち縛りにされた姿が進太の脳裏に浮かんだ。そしてもう、博子の存在も消えてしまっている。目の前の清美の顔が博子に重なる。進太は素早く決断を下した。伏せていた顔を上げ、真っ直ぐ清美の目を見つめた。

「キヨミ先生、お願いがあって来たんです。月曜日からは登校するし、約束どおりクラスメートの勉強も見ます。でも、うまく教えられるかどうか不安なんです。だから先生、今晩もう一度僕の家に来てください。お願いです。勉強の教え方で相談に乗ってもらいたいんだ。午後七時に待ってます。いつものように、自転車で来てください。その方が、僕も勇気が出る」

熱意を込めて言った進太の肩が震えている。清美の目頭が熱くなる。やっと進太に誠意が通じたと思った。思った瞬間、授業の再開を告げるチャイムが鳴った。教室の入口から子供たちが駆け込んでくる。進太は清美の目を見つめたまま返事を待った。
「ええ、行くわ。絶対行きます。午後七時ね」
念を押して答えてから、清美は教室に戻った。燃えるように輝いていた進太の眼差しが胸の底に焼き付いて残った。


進太は日が暮れる前にバイクでドーム館に向かった。落ち葉の舞い散る大小のカーブを車体を斜めにしてクリアしていく。かん高いエンジン音が晩秋の山並みに響き渡った。さしもの警察も日暮れ前には山地を引き上げる。特に今日は、一台のパトカーも見掛けなかった。進太は三日間のロスを取り戻そうと、思う存分にカワサキKX60を操った。ドーム館を見下ろす坂の途中で、もう一度思案を巡らす。だが、チハルからゲレンデヴァーゲンを借りる名案は浮かばなかった。かといって、たとえ相手がチハルであれ、清美を拉致するために車が必要だとは言い出せない。黙って貸してくれることに賭けるしかなかった。

ドーム館の玄関前には、祐子のレガシー・ワゴンが駐車してあった。やはり祐子は、チハルと付き合うのだ。Mの嘘が白々しい。進太がバイクを止めてエンジンを切ったとき、ドアを開けてチハルと祐子が外に出てきた。祐子は普段どおりのセーターとジーンズを身に着けていたが、チハルのスーツ姿が進太を驚かせた。体型にぴったり合った光沢のある紫紺のスーツは、チハルの精悍な美しさをひときわ目立たせている。タイトなスカートから伸びた脚が目にまぶしかった。「女のチハル」を始めて見る思いがした。素っ裸でいるときより、数段女を感じさせる。スーツを着ただけで小柄な身体が大きく見えるのだから、つくずく不思議な女性だと思う。ロサンゼルスのキャリアウーマンという前歴の一端を見る思いがした。

「進太、また学校に行っていないのね。来年は高校生でしょう。そろそろ不登校から卒業しないと、私みたいに後悔するわよ」
ぽかんとした顔でチハルを見つめていた進太に、祐子が声を掛けた。進太は露骨に眉をしかめた。説教など聞きたくもない。特に今日はまっぴらだった。祐子を無視して、縋るような目でチハルを見つめた。スーツ姿のチハルにはゲレンデヴァーゲンは似合わない。祐子のレガシーで出掛ける予感がした。
「チハルが車を使わないなら、ぜひ僕に貸して欲しいんだ。ねえ、お願いだよ」
さりげなく言おうとしたが、口を突いた声は我ながら切羽詰まって聞こえた。チハルの横に立った祐子があきれた顔をしたのが分かる。
「まあ、あきれた。バイクばかりでなくジープを運転したいって言うの。危ないわよ。チハル、貸してはだめ。私がMに叱られるわ」
祐子の鋭い声にも反応を見せずに、チハルはじっと進太の目をのぞき込んだ。進太も正面からチハルの視線を受け止める。
「いいわ。貸して上げる。さんざん練習したんだから運転は心配ない。でも、警官に止められたとき、無断で乗り出した車だって言えるかい」
「言えるさ。チハルには決して迷惑は掛けない。恩に着るよ、ありがとう」
即座に答えた進太の前にチハルがキーを差し出す。進太は震える手でキーを掴んだ。
「チハルは無謀すぎる。進太はまだ中学生よ」
祐子が頬を膨らませて抗議した。チハルは黙ってレガシーの助手席のドアを開けて先に乗り込む。
「責任は私が取る。さあ、祐子、久しぶりのデートよ。早く車を出してちょうだい」
大きな声で言ってから、またチハルが進太を見上げた。緊張しきった顔に目で笑い掛けてから、小さくうなずく。進太は反射的に深々と頭を下げた。再び顔を上げた目に、暗くなった景色の中に遠ざかっていくレガシーの、赤いテールランプが小さく見えた。


サロン・ペインのカウンターにチハルと祐子は並んで座っていた。まだ時刻が早いので他に客の姿はない。手持ち無沙汰にしているチーフも、二人の会話に割り込む気はなさそうだ。カウンターの中で黙々とグラスを磨いている。チハルはゆっくりバーボンを舐めた。ジャックダニエルのストレートが舌に苦い。殺されたボギーが大好きだった酒だ。チハルはボギーの思い出を舐めるように、帰国してからもジャックダニエルを選ぶ。舌に苦い酒が甘く感じられるようになれば酔いが回る。ボギーとの楽しかった日々の記憶が酔いを明るくさせてくれるのだ。
「チハルもMと同じで、時々怖くなることがあるわ。今日の出掛けもそうだった。毎日おどおどと悩んでいるような進太に、チハルは危険なことばかりさせている。あの子はきっと、さらに悩むわ。どう見ても進太は、偉大な個性も人格も持っていない。それなのに、チハルやMに憧れて背伸びをするの。私の若い時を見るようで、本当に心配よ」
日本酒のオンザロックを右手に持った祐子が、カウンターの中の鏡に映るチハルを見つめて愚痴を言った。聞いていたチハルの目が一瞬光る。
「祐子、私がMと一緒に話題にされることを嫌っているのは承知でしょう。あの女と祐子が仲良くするのはもう気にしないけど、同列で語ることは許さない」
「ごめんなさい。二人には頭が上がらないから、つい一緒にしてしまうの。気を悪くしたのなら謝るわ」
祐子が素直に頭を下げた。チハルの口元に苦笑が浮かぶ。祐子の目を見つめて真剣な表情で尋ねた。

「いつか聞こうと思っていたんだけれど、祐子はドーム館に定期的に食料や日用品を届けてくれるよね。蔵屋敷にも届けているって進太に聞いた。決して迷惑だとは言わないけれど、どうして祐子は頼まれもしないことをしてくれるんだい」
チハルの問いを聞いた祐子があっけに取られた顔になった。続けて頬が真っ赤に染まる。
「チハルが気にすることじゃないわ。買い出しは勝手にやっているのよ。私は市街に住んでいるし、チハルにもMにも、些細なことに気を使わずに、のびのびとしていてもらいたいだけよ。それに、定期的に二人に会える。私と違った大きな存在に触れると、勇気が湧くのよ。私には機を織ったり、買い物をしたりする以外に能力がないの。二人とは違うわ。意気地なしだし」
小さな声で祐子が答えた。今にも泣き出しそうな気弱な声だ。
「本当に意気地なしだ。Mの足手まといよ」
カウンターの中でチーフがつぶやいた。聞こえよがしの大きな声だ。聞いていたチハルが大声で笑い出した。祐子の頬がますます赤くなる。チハルが笑いを納め、大きく溜息をついてから口を開いた。

「チーフの言葉は半分当たっている。祐子は等身大の自分が見えてないんだ。ねえ、よく考えてごらん。私もあの女も、毎日をただ無為に過ごしているだけだよ。いくら何でもできると見せ掛けていたって、糞の役にも立ちはしない。人は、やり遂げたことがすべてさ。やるかも知れないこと、やれるかも知れないこと、みんな嘘っぱちさ。祐子が機を織って作品に仕上げたり、チーフが商売に精を出して金を蓄えたりすることと比べたら、ゴミのようなものよ。そのゴミも、見る人が見ると偉大な財宝に見えることがあるのかも知れない。でも、それは見方が違っているんだ。個人が人に感じさせる迫力など、残された仕事に比べれば泡のようなものだよ。結局、消滅するだけで何も残らない。あの女や私を、祐子が怖がる必要はこれっぽっちもないね」
チハルの熱弁を、祐子は両手で耳を覆って耐えた。これだからチハルは恐ろしくてならないと思う。チハルの言葉の先には滅びしかない。その滅びを自ら求めているようなチハルが悲しかった。やはりMとは違うと思うと、無性にチハルが愛おしくなって涙が出た。チーフが身を乗り出して口を挟む。

「あんたはどこから見てもキャリアウーマンだし、人間的迫力もある。でも、私に言わせれば、やっぱりガキよ。あんたの嫌いなMとは大違いね。少なくとも、Mは理屈を言わない。自分の信じた道を真っ直ぐに行くのよ。女同士で愚痴をこぼし合ったりはしないわ。実を言うと、ついさっきMは店に来たのよ。今も二階の会員ルームにいるわ。商売上、口は堅いつもりだけど、あんたには別よ。Mの敵らしいからね。そう、Mはいい男と二人きりで夜を過ごすつもり。ねえ、人には男と女の二種類があるのよ。その二つを繋いだり、引き離したりするのが性。性の極まりが官能だわ。祐子は官能を怖れているだけよ。Mは怖れずに官能を追い求める。さて、あんたはどっちの道を行くのだろうね。私は当面、そっちに興味があるわ」
チーフの言葉を黙って聞いていたチハルが、ゆっくり立ち上がった。二階に続くドアを目指して真っ直ぐ歩いていく。遅れて立ち上がった祐子がチハルを追う。チーフが素早く祐子の手にキーを握らせた。
「ご希望なら、Mの隣の部屋が空いているからお使いください。女同士のセックスもすてきですよ」
チハルの背に、楽しそうなチーフの声が飛んだ。


会員ルームの間接照明が裸身を照らし出している。厚いカーペットの敷かれた床に、Mは素っ裸で正座している。黒い麻縄で厳しく後ろ手に縛られていた。名淵が口移しに飲ましてくれるシェリーの酔いが回り、妖艶とした白い肌が薄いピンクに染まっている。狭い部屋が濃厚な女の匂いで咽せかえりそうだ。名淵は黒い瓶から直接シェリーを口に含み、首縄で戒められたMの喉から口へと唇を這わす。そっと開けた口にMの舌が滑り込み、一刻を惜しんでシェリーを啜り合う。Mが身悶えする度に、縄目から突き出た乳房が名淵の裸の胸をなぶった。硬く張り切ったペニスが今にも暴発しそうになる。名淵は意地悪く身体を引いた。

「それで、どこまで話したかな。参ったな、Mさんが燃え上がったので忘れてしまった。とにかく、白いパジェロは学校から先では目撃されていない。たまたま、学校から五キロメートル先の街道で道路工事をしていた。片側通行止めになっていたんだが、そこも通り抜けていない。つまり、Mさんたちの住む蔵屋敷の沢と忍山沢、それから築三百年の屋敷のある沢の間で二人は車ごと消えてしまったんだ。県警の捜索は三日間行われたが、手掛かりはなかった。今日で大掛かりな捜索も打ち切りになったよ」
話し出した名淵が口をつぐみ、Mの顔をのぞき込んだ。聞いているかどうか気掛かりになったのだ。

「聞いているわ。やっぱり忍山沢と築三百年の屋敷があやしそうね。私も気が重くなるわ。ねえ、もっと重要な、秘密の発見はなかったの」
答えたMが、大胆に膝を開いて問い掛けた。名淵が素早く股間に手を伸ばす。愛液で濡れた陰部が指先を奥に誘う。
「実は、忍山沢の渓流に突きだした岩棚の上で、金のテニス・ブレスレットが発見された。小さなダイヤがたくさんついているやつ。それと同じ種類のブレスレットを、博子さんも持っていたらしい。まだ鑑定中だけど、間違いはないと思う。築三百年の屋敷の庭にも、結構新しそうな轍の跡が見付かったという。忍山沢から渓流づたいに山越えをすると、あの屋敷の前に出られるんだってね。明日二人でその屋敷に行ってみようよ。僕はぜひ、実際に見てみたい」

「あの屋敷には二十六年間、私は近付いたことがないの。気が進まないわ」
Mが不服そうに答えると、名淵の指先が身体の中に侵入した。
「さあ、僕は色仕掛けに負けてここまで喋ったんだ。今度はMさんの番だ。二十六年前、あの屋敷で何があったんだい。ほら、いい加減に白状するんだ」
Mの耳元をねっとりしたバリトンが掠め、指先が股間をなぶった。二本の指が陰部に侵入し、粘膜を責める。
「ヒッー」
思わず歓喜の喘ぎがMの口を突いた。
「さあ、何があったんだ。きっと今と同じようなよがり声を出したんだろう」
名淵の指が執拗に股間を責め、左手が乳首をなぶった。正座した尻が床に落ち、高々と背中に緊縛された両手が宙を掴んだ。
「そうよ、あなたと同じセクシーなバリトンが、私を官能の地獄に誘った。尻を、お尻を鞭で打たれたわ。死ぬほど打たれて、私は絶頂に登り詰めた。さあ、早く、鞭を振るってちょうだい。責め苦の中に燃え上がる真っ黒な炎を、もう一度見せてちょうだい。その漆黒の炎に導かれて私は生きたい」

Mの絶叫が終わると同時に鞭音が響いた。鞭先が鋭く空を切り、素肌を叩くかん高い音が連続する。呻きと絶叫が混じり合い、二つの裸身が入り乱れた。狭い空間はもう、凄惨な修羅場のようだ。二人の身体が空っぽになって肉に変わり、漆黒の炎がメラメラと燃え立ちそうになったとき、突然隣室の壁が震えた。一瞬二人の痴態が凍り付く。澄ませた耳に、連続して壁を蹴りつける音が伝わってきた。
「変態女め、恥を知れ。進太は今、死の迷路を彷徨ってるんだ」
遠く女の声が響き渡った。素っ裸の尻を掲げたMの脳裏に、傲然と修羅場を見下ろすチハルの姿が浮かび上がった。


進太は街道沿いの小さな退避場にゲレンデヴァーゲンを止めて清美を待った。街道から蔵屋敷に曲がる横道の手前、五百メートルの地点だ。通行車両に目撃される危険性は十分承知していたが、自転車に乗った清美の姿を確かめたい誘惑には勝てなかった。幸い山地では四輪駆動車は目立たない。黒塗りのボディも闇に溶け込んでいて好都合だった。またたきもせずにバックミラーに映る闇を見つめていると、自分が闇になったような気がする。もうじき、この闇から二度と這い上がれなくなる。進太はハンドルに置いた両手を強く握り締めた。気温は低くなってきていたが、両手はうっすらと汗ばんでいる。今夜の進太は黒いセーターにブラックジーンズを着ている。黒の全頭マスクやパンテイ・ストッキングを被ることも真剣に考えたが、銀行強盗と間違われそうなのでやめた。やはり、清美に好かれる格好にしなければならない。

左のフェンダーミラーにポツンと光る明かりが映った。進太は目だけに神経を集中して座席の中で身体を縮める。やがて明かりはバックミラーの中に入ってきた。星がまたたくように明るさが変化している。間違いなく自転車のランプだった。ペダルの踏み方によって光量が微妙に変わる。追い越される寸前に、進太はドアの陰に隠れた。急いで身を起こすと、白いダッフルコートを着た清美の後ろ姿が見えた。前屈みで懸命にペダルをこぐ様子がかわいかった。進太はきっかり五分間待ってからゲレンデヴァーゲンのエンジンをかけた。静寂を破る低いエンジン音が腹に響き、ヘッドライトの白い光が闇を切り裂く。余りにも目立ちすぎて、自転車に乗った清美を追尾することが無謀に思われてしまう。しばし考えてみたが、もう逡巡はできない。やるか、やらぬのかの二者択一でしかなかった。進太はもう逃げたくはなかった。思い切ってアクセルを踏むと、装甲車のような車体が軽々と発進した。

ヘッドライトの光の中に、自転車に乗った清美の姿が浮かび上がっている。剥き出しの身体が痛々しいほど不安定に見える。フレームに張った赤い蛍光表示が左右に揺れている。後ろから迫ってきた進太に道を譲るように速度を落とし、道路の左に寄った。両者の距離が急速に縮まっていく。フロントガラスの中で、清美の後ろ姿が大きく膨らんでくるような気がする。追突まで数秒も残されていない。進太の胸を恐怖が掠めた。ハンドルを切って追突を避けたくなる。必死で恐怖に抗い、両手を突っ張って進路を維持する。冷静に急ブレーキを踏んだ。タイヤの軋る音に比べ、追突のショックはほとんどなかった。フロントバンパーが何かに当たった感触と同時に清美の身体が前につんのめり、反動で後ろに倒れた。白い自転車が横倒しになる。進太は即座にすべてのライトを消してエンジンを切った。追突現場の一切を闇が包み込んだ。進太は助手席に置いたマグライトとロープを掴んでドアを開けた。追突のショックで動転している清美を素早く縛り上げねばならない。高い運転席から路上に飛び降りた途端に膝頭が震えた。全身を包んだ闇が怖い。路上を転がっていく枯れ葉の音が耳に障った。転倒した痛みを訴える声も聞こえないし、清美がうごめく気配もない。進太の胸を不安がよぎった。マグライトを点灯して路上を照らし出した。巨大なフロントバンパーの下に仰向けに倒れている清美が見えた。しっかり目を閉じて微動だにしない。進太の膝が大きく震えた。震えは全身に伝わり、マグライトの光が激しく上下する。全身が硬くなって脂汗が吹き出してきた。生暖かい感触が股間に広がる。進太は清美の死体を見下ろしたまま長々と失禁した。だが、小便を垂れ流しながら見下ろす死体は、まるで生きているように見える。路上には一滴の血も落ちていない。進太は勇気を奮い起こして清美の顔の横にひざまずいた。そっと口元に手をやると確かな呼吸をしている。急に全身の力が抜けた。思い切って揺り起こそうとしたが、すんでの所で思いとどまる。慎重に頭部を撫でてみると、側頭部に大きな瘤ができていた。倒れた拍子にフロントバンパーに頭をぶつけたらしい。脳震盪という言葉が進太の頭に浮かんだ。だが、救急車を呼ぶわけにはいかない。慎重に荷物室に横たえて、自転車と一緒に運ぶことに決めた。大きな不安は残ったが、ともかく計画は成功したのだ。深々と冷たい外気を吸い込むと股間に寒さを感じた。情けなく失禁した事実を改めて思い出した。

荷物室に寝かせた清美を気遣って、進太は殊更ゆっくりとゲレンデヴァーゲンを運転した。時刻はもう八時近くになっている。街道を走る間も、対向車が一台あっただけで追尾する車両はなかった。築三百年の屋敷に続く横道に入ってからは、余裕を持って運転した。ヘッドライトの光が黒々とした長屋門を照らし出した。斜めに崩れ落ちた梁の下を慎重に潜り抜ける。広々とした庭にでたが、霜枯れた草地に轍の跡を残さないように、できるだけ大回りに庭を回って博子を監禁していた土蔵に向かった。厚い土の扉の前にゲレンデヴァーゲンを後ろ向きに止める。コンテナから出したコールマンのランタンに火を灯してから土蔵の扉を開けた。少しかび臭い匂いが鼻を突いたが、中は寒くなかった。置き去りにされたテーブルの上にランタンを載せ、家から持ってきた二枚の毛布を柱の横に広げた。リアゲートを開き、荷物室に横たわった清美を慎重に抱き上げて運び、毛布の上に寝かせた。清美は相変わらずぐっすりと寝入っているようで反応がない。ただ、呼吸はしっかりしていて、顔色もいい。最後に後輪の曲がった自転車を運び入れてから扉を閉め、横たわった清美の隣りに、柱に寄り掛かって座り込んだ。清美がいつ目覚めても対応できるように麻縄の束を床に広げた。光の加減で清美の横顔が微笑んでいるように見える。進太も他愛なく微笑み返す。その瞬間、ここに泊まることを決心した。ちょうどMも留守だ。朝が早い歯医者さんも、もうじき寝入ってしまう。進太に干渉できる者は誰もいない。土蔵に外泊することを決断すると急に気が楽になった。失禁で濡れた股間が不快になる。両足を投げ出して座ったまま靴を脱ぎ、ズボンを下ろした。黒いビキニショーツも脱いで下半身を剥き出しにする。陰毛の中に縮み込んでいたペニスを摘んでハンカチで拭いた。思ったより寒さは感じない。ランタンの火で密閉された室温が上がったようだ。手持ち無沙汰な好奇心が、今夜の獲物を点検したい欲望に火を点けた。萎んでいたペニスが硬くなってくる。

進太は中腰になって清美の横に屈み込んだ。もこっりとしたダッフルコートがこの場の雰囲気に馴染まない。コートの裾から伸びた紺色のウールパンツも、ブーツ型のスニーカーも似合わないと思った。手を伸ばしてスニーカーの紐を解いて靴を脱がせる。白い綿のソックスを脱がすと、ストッキングに包まれた小さな足が現れた。左の足首の外側から血が滲んでいる。転倒したときに負った擦り傷らしい。小さな足を両手で持って傷口に口を寄せた。舌を這わせると酸っぱい血の味が口中に広がる。勃起したペニスが痛くなるほど硬くなった。もう我慢ができなかった。白いダッフルコートの前をはだけさせて藤色のセーターをたくし上げた。紺色のパンツのジッパーを下ろし、一気に引き下ろす。あらわになった下半身を見て、進太は目を見張った。清美の股間には黒い小さな布切れしか張り付いていない。それも薄手のレースで、性器が透けて見えるほどだ。黒いTバックのショーツの上から白いガーターを付けて、ストッキングを止めていた。思いがけない大胆な下着が進太の欲情をそそった。震える手でセーターとババシャツを脱がせる。Tバックとお揃いの黒いレースのブラジャーが、ふっくらとした胸を覆っている。勝ち気な清美によく似合っていると思った。

「凄い、見直したよ」
声に出してつぶやいてから、進太は立ち上がった。テーブルに載せたランタンを引き寄せ、下着姿で横たわる清美を明るく照らし出した。見下ろした清美は、服を着ていたときとは別人のようだ。二十代後半の、美しい盛りの肉体を誇らかに晒している。黒いレースで透けて見える乳房は、はち切れんばかりに盛り上がっている。細く締まったウエストから豊かな腰が広がり、股間を割った紐のような布切れの両端から柔らかな陰毛がはみ出ていた。進太は美しさに誘われるようにして再びしゃがみ込んだ。肩と尻を持って身体をうつ伏せにする。丸い尻の割れ目を走る黒い紐が真っ先に目を射た。裸と変わりのない、より艶めかしく見える尻だ。進太は唾を呑み込んでから黒いTバックを脱がした。ブラジャーのホックも外して背中をあらわにさせる。滑らかな素肌が手に張り付きそうだ。均整のとれた裸身が目にまぶしかった。

「ウーン」
突然清美の口からうめき声が漏れ、大きくくしゃみをした。進太は慌ててランタンを消す。真の闇が訪れた。手探りで床に置いた麻縄を捜す。
「寒いわ。ここはどこ」
清美の掠れた声が響き、身体を起こす気配がした。進太は麻縄を握り締めたまま床にうずくまり、じっと清美の気配を探った。
「明かりはないの。何も見えない」
また清美の声が聞こえた。進太は声の方ににじり寄る。すぐ側で荒い息づかいが聞こえた。闇を怖れる清美の恐怖がヒシヒシと伝わってくる。後は清美の向きを確認するだけだ。進太は手に持った麻縄で床を薙いだ。縄の擦れる不気味な音が響き渡る。
「だれ、誰かいるのね」
すぐ前で声がした。間違いない、清美は背を向けている。進太は両手を開いて闇を抱きすくめた。清美の両乳房を左右の手に感じた。すかさず両脇に手を差し入れて、腕を背中にねじ曲げる。素早く麻縄を素肌に這わせて後ろ手に縛り上げる。

「痛いっ、何をするの。痛いわ、痛いっ」
闇の中で清美が大声を上げて裸身を揺すったが、抗う術はない。二週間に渡って博子を縛り慣れた進太には闇も妨げにならない。きつく乳房の上下を縛り上げてから、首縄を掛けて縄止めをした。緊縛が終わると、観念したように清美の身動きが止まった。荒い息づかいだけが伝わってくる。
「だれなの、一体だれなの。こんな乱暴をされるいわれはないわ。人違いじゃないの。それとも、車をぶつけた人なの。ねえ、何とか言ってよ。裸で縛り上げるなんてあんまりだわ。ねえ、答えなさいよ」
闇の中で後ろ手に緊縛された恐怖で、清美は連続して言葉を投げた。床に正座している気配がする。全裸にされたことも認識しているらしかった。進太は手探りでランタンを置いたテーブルを捜した。ランタンの自動点火装置を探し出して慎重に操作した。カチッと乾いた音が響き、蔵中がまぶしいくらいに明るくなった。中央に正座した裸身がブルッと震えた。ランタンを背にした進太を見上げる。

「消して、明かりを消してください。お願い、見ないで」
真っ赤になった顔を伏せて、頭を左右に振りながら清美が叫んだ。素肌を噛んだ縄目の軋る音が陰惨に声に混じった。
「キヨミ先生、明かりを点けるように頼んだのは先生ですよ」
進太の低い声で清美が顔を上げた。大きな目をさらに大きく開いた驚愕の表情で進太を見つめる。
「まさか、進太ちゃんなの。暗くてよく見えないけれど、嘘でしょう。進太ちゃんがこんなことをするわけがないわ。だれなの」
清美が凛とした声で叫んだ。人が事実を認めたくないときは、事実を拒絶してしまうのだ。だが、進太は拒絶されるわけにいかない。二歩前に進み、明かりの当たる場所に出た。清美から二メートルの位置だ。正座した清美の目の前に進太が立っている。剥き出しの股間で大きく勃起したペニスが反り返っていた。もじゃもじゃの陰毛の中に突き立ったペニスが嘲笑っているように見える。清美は小学校三年生の夏休みの山根川で、進太と水遊びをしたことを思い出した。進太は素っ裸だった。皮を被ったかわいいペニスをよく覚えている。その小さかった進太が、教師の清美を素っ裸にして後ろ手に縛り上げたのだ。挙げ句の果てに、猛々しく成長したペニスを目の前に見せ付けている。とても信じられることではなかった。許されることではない。全身から血が引いていく感触がした。正座した膝が崩れ、白い裸身が床に倒れた。

「先生、無理をしちゃだめだよ。追突の時に、きっと軽い脳震盪を起こしたんだ。側頭部に大きな瘤ができていたよ。楽にしていた方がいい」
無邪気な言葉が清美の怒りに火を点けた。もう、事実を認めるしかなかった。
「進太ちゃん、何を言うの。先生にこんな乱暴をして。もう、ただでは済まないわよ。早く縄を解きなさい。できるだけ穏便に済ますから、悪質ないたずらはやめなさい」
叱責の声を進太は平然と聞き流した。清美も意外に無能な女だと思った。
「決していたずらじゃないですよ。どう見ても立派な暴力です。僕は先生に説得されて、補習の約束をしたけれど、やはり嫌になりました。だから、約束した相手のキヨミ先生を、消しゴムで消すことに決めたんです。ここで監禁することにします。つまり、外の世界では先生は消えてしまう」
倒れ伏した清美の裸身に、進太の無表情な声が落ちた。清美の背筋を恐怖が貫く。狂気としか思われない言葉だった。大声が口を突いた。

「なんて馬鹿なこと言ってるの。監禁ですって。私を消してしまうですって。戯言を言わないで、現実を見なさい。たかが補習の講師になりたくないからと言って、教師を監禁する馬鹿がどこにいますか。それも先生を裸にして辱めるなんて聞いたこともない。今なら許します。早く縄を解きなさい。お願い、進太ちゃん、早く冷静になって」
「冷静になった方がいいのはキヨミ先生ですよ。僕が取り返しのつかない道を選び取ったことを、先生は理解すべきだ。たとえいくら不合理でも、現実は現実として認めるべきなんです。それに、監禁にはそれなりのマニュアルがあることも知っていた方がいい。素っ裸にして拘束するのが監禁の原則です。もっとも、僕はチハルとは考えが違うから、先生が素直になりさえすれば、週に一度は服を着せます。シャンプーも行水も認めますよ。何と言っても先生は一生、ここで僕と一緒に暮らすんですから。さあ、そろそろ立ち縛りにしますよ。それとも隅にあるバケツで小用を済ませてからにしますか」

進太の声が終わると同時に、清美の怒りが消え失せていった。進太は完全に狂気に取り付かれてしまったと思った。居たたまれない絶望だけが清美をさいなむ。悔しいことに尿意も襲ってきた。冷たさが下腹部を責める。だが、進太はバケツを使って小用を足せと言ったのだ。真っ黒な絶望が襲い掛かり、目の前を死が掠めた。舌を噛みしめた歯に力を込める。舌の痛みが全身に伝わり、素っ裸で舌を噛んだ死に様が脳裏に浮かんだ。犬死にを絵に描いたような滑稽な死だと思った。その時、啓示のように内なる声が響いた。「狂気は必ず隙を見せるはずだ」と声は告げた。すんでの所で清美は歯の力を緩めた。初めて希望が見えたような気がした。妄想のような希望だったが、清美はその希望を信じた。狂気に捕らわれた教え子の隙を勝ち取れなければ、教師として生きてきた値打ちが無いと確信した。ましてや、教え子に責められたくらいで自殺するのは笑止の沙汰だった。これは形を変えた学校暴力に過ぎないと、必死に思い込もうとした。

清美は歯を食いしばって立ち上がり、胸を張って進太に小用を要求した。差し出されたバケツの上に堂々と屈み込んだ。素っ裸で後ろ手に緊縛された背筋を伸ばして、真っ正面から進太を見上げた。教育者の力で何とか恥辱に打ち勝ちたいと願ったが、恥ずかしさで全身が赤く染まる。裸身がぶるぶると小刻みに震えだした。思い切って両膝を開き、進太の目に股間を晒す。歯を食いしばって放尿した。だが、長々と続く放尿がたまらない屈辱を呼び覚ました。清美は肩を落として顔を伏せ、さめざめと泣いた。


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