7.鋸屋根工場に語る

冷たい闇を切り裂いて、ホンダの400ccのオートバイが織姫通りを走り抜ける。前照灯の鋭い光が、天満宮の石の鳥居を掠めて流れ去る。
チハルは大きく車体を右に寝かせ、機屋横町へと右折した。後ろに乗せた祐子が、ウエストに回した両手を握り締め、懸命に身体を傾けている感触が伝わってくる。可愛らしくて、思い切り抱き締めてやりたいとチハルは思う。

古風な街灯が続く道を直進し、山根川に架かる橋の手前で右折したところがチハルの生家だった。古びた木の門柱の先に広々とした庭が広がっている。蔦の絡んだ石造りの鋸屋根工場を、前照灯の白い光が照らしだした。
理事長からの緊急ファックスを祐子の部屋で受け取り、身支度を整えてオートバイに飛び乗ってから、まだ五分と経過していない。素早い行動に、チハルは我ながら満足した。

祐子がオートバイを飛び降りた後、ゆっくりスタンドを立て、チハルは工場を見上げる。出来上がったばかりの車寄せの屋根が頭上を被っている。工場の景観を考え、車寄せ全体が艶消しの黒で仕上げられている。車寄せの上には、石の壁に穿たれた小さな高窓が三つ、先端にアールを持たせた粋な形で並んでいる。鋸屋根も三棟、闇の中に絶妙のフォルムを晒して、大きく突き立っているはずだ。引き締まったチハルの身体が、黒いライダースーツの中で武者震いした。いよいよここへ、理事長を迎えるのだ。

背負ってきた小さなリュックを下ろした祐子が、中から携帯電話ほどのリモートコントロールのスイッチを取り出し、チハルに手渡す。
チハルが入り口のシャッターに向けてスイッチを押すと、幅三メートルの硬質プラスチックのシャッターが見る間に上がっていく。厚いガラスの自動ドアが目の前に現れた。
チハルの押すスイッチに従い、車寄せが明るく照明され、続いて庭の外灯が点灯する。最後に自動ドアの中が落ち着いた明度で輝き、さっとガラス戸が左右に開いた。二人は工場の中に入っていく。

工場の右端に開いた入り口から真っ直ぐ、幅三メートルの通路が三棟の鋸屋根を貫いて続いている。通路の右手は石の壁で、左手は組木の厚い壁になっている。組木の壁は新たな改修で設けられたものだ。二十メートル続く長い壁面に、大きなドアが三つ備え付けられていた。床は檜の白木でフローリングされている。床から三メートルの高さで、複雑に交差した黒々とした松材が鋸屋根を支えている。鋸屋根の切っ先までの高さは、床から七メートルもある。チハルが入れたエアコンがやっと効きだし、微かな音と共に温風が木の壁面に空いた吹き出し口から流れ出している。しかし、石造りの広大な通路は凍り付くように寒い。二人は身体を震わせながら奥に向かった。二つドアを通り越して、一番奥の大きなドアをチハルが開け放した。通路の明るさに慣れた目が、広大な闇の空間に圧倒される。四十畳ほどもある空間の天井に、細長く切り取られた星空が見えた。まるでパノラマ写真を見るように星空が広がっている。

チハルが壁のスイッチを入れると、広々とした空間に落ち着いた光が満ちた。鋸屋根の複雑な梁に備え付けた二十灯ほどのライトが、影のできないフラットな照明を演出している。夜間でも鋸屋根特有の光を得られるように工夫してあるのだ。
「ここが祐子のアトリエになる」
感に堪えた声で、後ろに続く祐子を振り返ってチハルが言った。
「でも、もうしばらくは理事長の作戦本部に使わせてもらう」
チハルがドアを閉めながら、祐子の許可を得るように言った。

黙ったままの祐子の目に、広々とした空間が映っている。床に並んだ十脚ほどの布張りの椅子も、奥に置かれた大きな机も、机の横の電動ベッドも皆、この空間では不安になりそうなほど小さく見える。まるで空間が中にいる人間を脅迫してくるようだ。
「怖いわ。一年前にチハルが案内してくれた工場とまるで違っている。あれほど温かくて、優しかった空間が消え失せてしまった。取り去った織機の跡だけが整然と残る、あの懐かしく悲しかった空間が見当たらない。古い温もりが、新しい環境に呑み込まれて悶えているような感じがする」

「ごめん。突然見せたから、祐子は戸惑っているだけだよ。鋸屋根工場の外観は何も変わっていない。エアコンだって壁の隙間に付けた。内装が変わっただけだよ。理事長がコスモスに命じて改装させたんだ。黙っていて悪かったけど、理事長に過分な金額で工場を買い取ってもらったんだ。お陰で母も都会の兄の元に行けた。理事長が工場を使うのも、作戦本部を置いている間だけだ。長くとも来年いっぱいさ。その後はまた、私が自由に使っていいことになっている。祐子は心配しなくていい」
チハルが慰めるように説得したが、祐子の視線は怯えたように空間を泳ぐ。最前まで星空が広がっていた北向きの長い窓に、醜く反射したライトの光が不吉な予感さえ運んでくる。

ようやく上がってきた室温にも関わらず、祐子の背を寒い風が撫でていった。
「さあ、仕事をしよう。祐子は理事長のベッドをメイクしてくれ。私はピアニストが用意したはずの医療器具を運び込む」
気分を変えるように大声で言ったチハルが、入り口の横にある小さなドアを開けて隣の棟に向かう。開かれたドアから凍り付きそうな冷気が入り込んだ。急に襲った寒さにぞっとして、祐子が首をすくめてのぞき込むと、今いる棟の二倍はある寒々とした空間が、天井から吊られたちっぽけな裸電球の光を浴びて広がっていた。右手に見える真新しい建材で造られた方形の突き出しが異様だったが、煤けたコンクリートを打ちっぱなしにした、懐かしい空間が残っている。織機の置かれてあった土台だけが一列に規則正しく並び、そこここに古ぼけた調度が転がっている。涙がこぼれそうなほど悲しく、乱暴な、人の温もりが冷気の中に感じられた。

「寒いから祐子は入らないでいい。早くベッドメイクを済ませてくれ」
古ぼけた木のテーブルから、銀色に輝くステンレスのコンテナを下ろそうとしたチハルが、手を止めて祐子を振り返って言った。
「私も手伝う」
大声で応えた祐子の声が、石の壁で囲まれた空間に美しく反響した。
急ぎ足で駆け寄る祐子の全身を冷気が包み込む。吐く息が白く染まった。チハルが両手で抱えたコンテナの右端を祐子がつかみ、二人で協力して重いコンテナを床に下ろす。

「時間がなくて、こっちまで改造できなかったんだ。でも広々と使える」
弁解するようにチハルが言った。
「前の工場が残っていてほっとしたわ。私はここを使いたいな。石の壁が気持ちを落ち着かせてくれるわ。それにしても寒い」
「祐子の好きでいいけど、冬だけは改造した棟を使った方がいい。そこに石油ストーブがあるけど、火の当たっている所しか温かくならない。背中は凍り付きそうなほどだよ。まるで牢屋だ」
チハルの明るい声が響き渡った。底に車輪を付けたコンテナを転がして部屋に向かう。段差のある床をコンテナを持ち上げて越え、二重になった戸とドアを急いで閉めた。

「参った。せっかく暖めた部屋が台無しになった」
大声で笑ったチハルが、そう言いながらもライダースーツを脱ぎ、真っ白なコスモスのユニホーム姿になった。手元のリモートコントロールで確認した室温は、十一度ある。祐子も赤いダウンジャケットを脱ぐ。ブラックジーンズの上に着た大きめの黒いセーターがよく似合っていた。

てきぱきと部屋全体を整え、電動でフレキシブルに動く大きなベッドにシーツと毛布を掛けて、二人の仕事は終わった。
「トイレはどこにあるの」
小さな声で祐子が聞いた。
「それが楽しいんだよ。案内する」
右腕に巻いたオメガのスピードマスターに目を落としてから、チハルが笑みを浮かべて答えた。
チハルが北向きの壁の前に進んで立ち止まると、センサーが関知して壁面が大きく横にスライドした。ちょうどドアの大きさに空いた壁の先は、十畳ほどの小さなホールになっている。床一面に毛足の長い絨毯が敷かれ、間接照明の程良い光がホールを満たしている。左手が冷蔵庫を備えたキッチンになっていて、右手にドアがあった。中央に丸いテーブルがあり、五脚の椅子が置いてある。祐子がドアを開けると、さり気なくチハルが後に続いた。

幅二メートルの通路が鍵の手になって続き、左手が洗面所になっている。折れ曲がった先に白いトイレがあった。床は木のフローリングに変わっていたが、ここまで少しの段差もない。しかし、窓は一つもなかった。祐子は、先ほど見た方形の突き出しを思い出した。二棟続く広い工場の中に、部屋全体が突き出しているのだから、窓がなくて当たり前のことだった。
トイレの突き当たりの壁に埋め込まれた大きな姿見に、祐子の姿が映っている。背後に顔だけ出したチハルがいる。

「ずいぶん使い良さそうな洗面所ね。それに、住みやすそう。アトリエの奥にキッチンがあるなんて素敵ね」
祐子が声に出すと、鏡に映ったチハルの顔がうれしそうに輝く。ぴったり祐子の背に張り付いて声を弾ませる。
「理事長のためにコスモスが総力を挙げて改修したんだ。そして、理事長の仕事が終われば二人で住める」
チハルの手が祐子の前に回り、ジーンズのファスナーを下ろす。両脇を摘み、一気に膝までジーンズを下ろした。
鏡の中で無毛の股間が露になる。割れ目から顔を見せた可愛い性器をチハルの右手が摘む。思わず祐子の口から喘ぎ声が漏れた。
その時、ブザーの音が低く響き渡った。

「早い。もう理事長が着いた。祐子は後から来な」
チハルが言い捨てて駆け出して行く。鏡の中に、下半身を剥き出しにした祐子だけが取り残された。悲しそうな目から一筋、涙がこぼれた。

長い通路をチハルは走った。自動ドアの大きなガラス越しに、屋根に赤色灯を回転させた市民病院の救急車が見える。点灯されたヘッドライトの中を、鋭くカーブして切り込んできたMG・Fの赤い車体が掠めた。
チハルの唇が思わず歪む。
救急車の助手席から降り立った小柄な少年が、後部ドアを開けてスロープを引き出す。車椅子のハンドルを握ったピアニストが後ろ向きにスロープを伝い、緋色のガウンをまとった理事長をゆっくり降ろす。降りきったところでピアニストは修太に車椅子を任せ、病院の職員が差し出すファイルにサインをし医療鞄を受け取る。

チハルはリモートコントロールのスイッチを押して、自動ドアを開ける。
修太の押す車椅子に深々と頭を下げ「理事長、お帰りなさいませ」と言った。微かにうなずく顔を確認してから、道を空ける。一週間前にチハルが包丁で傷付けた修太が、無表情のまま車椅子を押していく。先導するのはチハルの役目だったが、チハルにはまだ仕事があった。キッと目を大きく見開き、閉じたばかりの自動ドアを見つめる。
待ち構えていたチハルの視線が、急ぎ足でドアの前まできたMを捕らえた。髪が乱れ、素顔のままの疲れ切った目がチハルを見つめる。皺の寄ったシルクニットのワンピースが玄関灯の光を浴び、裸体同然のシルエットを見せている。チハルは汚いものを見下すように、じっとMの視線を受け止めた。これ見よがしにスイッチを目の前に掲げ、ドアのコントロールを非情に切った。

「チハル。開けなさい」
低く、大きな声が厚いガラス越しに響いた。
「お引き取りください」
スイッチのマイクに向かって、チハルが冷たく言い放った。
「開けなさい」
再びMの声が響き、ドアガラスが拳で打たれた。
「チハル、」
毅然とした声が通路の奥から響いた。振り返ったチハルの目に、本部に続くドアの前でこちらを見ている一団が見えた。先頭に、車椅子に乗った理事長の姿があった。怒りに燃える両眼が赤く光って見える。

チハルは反射的に自動ドアのスイッチを入れた。大きく開かれたドアを通って、寒々と凍えたMの身体がチハルの横を掠めていく。チハルの憎悪が倍に膨れ、熱く燃え上がっていった。


「もう大丈夫だ」
よろめく足で車椅子から立ち上がった理事長が、肩を支えようとしたピアニストの手を邪険に払った。
「ピアニスト、薬の加減は慎重にしてくれ。お陰でとんだ失態を演じてしまった。Mにも迷惑を掛けた。済まない」
理事長の声は鋸屋根に反響して大きく聞こえた。
叱責されたピアニストの顔が赤く染まる。始めて見るピアニストの表情に、車椅子を取り囲んでいた全員が身を固くする。一人Mだけが、入り口のドアを背にして口元をほころばせた。理事長の謝意に軽く頭を下げる。

「理事長。今夜は私に時間をくださったはずよ。理事長の発作で中断してしまったけれど、まだその時間が続いていると理解していいのかしら」
落ち着いたMの声が広い空間にこだました。Mの位置からは小さく見える人間たちが、一様に唖然とした顔でMを見返す。
「M、何を言うんだ。理事長の様態を忘れたのか。安静が必要なんだ」
たまりかねたピアニストの声が、苛立ちに震えた。
「そうかしら。ピアニストが薬のさじ加減を間違えただけで、もう理事長は二時間前と変わらないんじゃないの」
ピアニストの冷静な顔が怒りで蒼白になった。均整のとれた身体が白衣の下で小刻みに震える。

「Mさん、やはりお引き取りください。理事長の医療スタッフと言い争いをされては困ります」
Mの前に立ったチハルが、怒りを押し殺して慇懃に言った。
「まあ、待ちなさい。チハルの言葉は秘書としてもっともだが、Mの言うことにも一理ある。まず私に着替えさせてくれ」
決断を後回しにした理事長がキッチンに通じる壁の隣に立った。すっと壁面が開き、クロゼットを巡らした八畳ほどの私室が現れる。素早くチハルが理事長の後に続く。
音もなく壁面が閉じると、三角形の天井を持った広大な空間に四人が取り残された。ピアニストはチハルが運んでおいた医療用のコンテナを開け、機材を出して点検を始めた。修太が側に寄り添って手助けをする。

Mは手近にある布張りの椅子に座り、珍しそうに鋸屋根の天井を見上げた。長さ二十メートル、幅二メートルの長大な天窓の、ライトの反射を免れた部分にぼんやりした星空が見える。ドーム館から見慣れた円形の夜空と異なった、長大なパノラマを見てみたいと思う。しかし、明かりを消せば、きっとまたピアニストが怒り狂うに違いなかった。てきぱきと働くピアニストに目をやったMの口元に、また笑みが浮かぶ。

「M、来てくれてほっとしたわ」
後ろから呼び掛けられて振り返ると、斜め後ろの椅子に座った祐子の頼りない視線と出会った。
「祐子は、テキスタイルデザイナー志望だって理事長が言っていたわ。ここは素敵なアトリエになりそうだ。楽しみだね」
「夢だけよ」
吐き捨てるように言った祐子は、三年前の投げやりな口調に戻っていた。Mの全身の疲労が鉛のように重くなる。
「その夢を祐子は信じているんでしょう」
「信じているわ。信じなければ生きていけない」
即座に返ってきた答えが、Mの疲労感にまた疲労を背負わせる。

「Mは会う度に悲しそうになる」
祐子の嘆きがMの心に沈み込む。
「前はチハルのようにエネルギッシュだったわ。私は悲しい」
チハルに比べられるとは、安く見られたものだとMは思った。しかし、もはや通じ合う言葉が見付からなくなっていた。
この広大な空間ではみんなちっぽけに見える。しかも、ちっぽけなことは、どの空間にあっても事実なのだとMは確信する。

「お待たせしました」
場違いなチハルの口上に続いて、理事長が姿を現した。ノーネクタイの白いシルクシャツの上に、アイボリーのシルクジャケット、パンツは黒のシルクといった絹づくめの装いだった。絹織物を織っていた鋸屋根工場にいるからといって、いささか悪趣味だと思ったが、Mもシルクニットを着ていた。苦笑が口を突いてしまう。
「M、今夜は初めて会う若い人が二人もいる。前からの友人も大切にしたいが、ご承知の通り、新しい人たちに夢を繋ぐのが私の楽しみなのだ。それほど残されてはいないMと過ごすための時間を、新しい人に割いてやりたいのだが、許してはくれないだろうか」
「私には理事長を独占する権利はないわ。どうぞ決断のままにしてください」
Mは即座に理事長に答えた。うまくこの場を取り仕切ったものだと思うが、決してチハルの入れ知恵ではないと思う。これは理事長の決断なのだ。多くの人たちの気持ちを踏みにじっていく機関車のレールが、鋸屋根の下に集まった人たちの手で、もうじき敷かれ始めるのだろうとMは思った。

チハルがドアを大きく開け放ち、Mの帰りを促す。
「ドアは開けなくてもいい。Mは帰りたくなったらいつでも勝手に帰ってくれ。わがままな言いようだが、必要なときに来てもらいたいのだ。できればしばらくの間、ドーム館にとどまって欲しい」
言葉が終わらないうちに、ピアニストが修太と連れだって理事長の前に進んだ。
「理事長、この少年は修太といいます。鉱山の町に住んでいますが、来春には工学部に進み、都市工学を専攻する予定です」
ピアニストの言葉を聞いた理事長の顔が、思わずほころぶ。
「修太です。新しい都市文化を創造するというコスモス事業団の主張に共感し、信じます。できる限り手伝います」
「コスモスは若い力を信じるし、必要としている。未来は君たちが造るのだ。思う存分コスモスを利用するがいい」
毅然とした理事長の言葉が響き渡ると、修太の頬がポッとピンクに染まった。

ピアニストと競い合うように、チハルが祐子を促して前に進む。
「いつも理事長に話していた祐子です。テキスタイルデザイナーになって、ここから文化を発信するのが夢です」
「祐子です」
恥ずかしそうに答えた祐子の全身に、理事長の視線が流れ、顔で止まった。
「君が祐子か、美しい。チハルが言っていた通りだ。夢の実現を信じているんだね」
「いいえ理事長、夢を信じているだけです」
即座に帰ってきた祐子の答えに、黙ったまま理事長がうなずく。
理事長の口元に、深奥から込み上げてきたような苦悩を、Mは見た。

そう、夢の実現など信じられなくて当たり前なのだとMは思う。信じられるとすれば、夢自体の存在しか有り得なかった。
Mは立ち上がってドアを開けた。そっと身体を通路に出して、後ろ手にドアを閉める。そのまま振り返りもせず、広い通路を玄関へ向かった。
広い空間を歩く自分の身体は、酷くちっぽけだとMは思った。そして恐らく、どこにいても人はちっぽけなはずだった。

驕りだけが、人を大きいと見誤らせる。
ドーム館へ戻ろうとMは思った。
もう、それほどの時間が残されていない理事長の希望に、添えられるだけのことはしたいと思った。


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